[レポート] 業務と消費者の体験を同時にデザインする リクルートの価値検証のリアル ー 「Airレジ ハンディ」セルフオーダーの ブレない「価値」の確かめ方 ー プロダクトマネージャーカンファレンス2020 #pmconf2020
はじめに
オハコンバンニチハ、CX事業本部の清田 (@kiiiyo)です。
2020年10月27日に開催された プロダクトマネージャーカンファレンス2020 ~見えない未来をリードするプロダクトマネジメント~ の トラックC-6で発表された業務と消費者の体験を同時にデザインする リクルートの価値検証のリアル ー 「Airレジ ハンディ」セルフオーダーの ブレない「価値」の確かめ方 ー セッションのレポートです。
概要
新規プロダクト開発プロセスの情報は、既に多くあります。 しかし、 「具体的に、今、何を価値と定義し、何をどう検証すれば良いのか?」 「『熱狂』とは何か、具体的にどんな状態を目指せば良いのか?」 このような疑問を抱く人も多いと思います。 今回、 リクルートの「Airレジ ハンディ セルフオーダー」立ち上げ~製品リリースまでを例に、 ブレない価値検証のポイントを、 リアルな事例を交えてご紹介します。
登壇者
- 川崎 絢司さん
- 株式会社リクルート
- プロダクトマネージャー
登壇資料
セッション
オープニング
- リクルートについて
- リクナビ、インディード、ホットペッパー、ゼクシーなどの消費者向けメディアのイメージが強い印象を思われている
- 中小規模店舗向けの経営や店舗業務の課題サービスも展開している
- エアレジ、エアペイなど
- 中小規模店舗の本当にやりたいことに集中してもらうようにしたい
- そのために 人がやる価値がある業務、やらなくてもいい業務を見極めるて、日々の業務を阻害せずに価値を定義しプロダクト化することが求められている
- 新規プロダクト開発における価値検証がテーマ
- プロダクトディスカバリーの領域
登壇者紹介
- Airレジ ハンディ セルフオーダーのPdM
- 今年7月にリリース!パチパチ
- キャリア
- 新規立ち上げ
- 価値検証
- 前職はベンチャー企業
- スーパーマーケットのスマートカート
- 店内の販促支援の価値検証
- メーカーむけの販促メディアの立ち上げ
- リクルート
- 位置情報つかったリアル店舗集客
- リピート販促支援検証
- ほとんど価値検証
- Airレジ ハンディ セルフオーダーの立ち上げ
- 今回はAirレジ ハンディ セルフオーダーの価値検証のお話
Airレジ ハンディ セルフオーダーとは
- お客様のスマホからいつでも注文ができる
- 店舗にあるQRをお客さんがスマホでで読み取って、好きなタイミングで注文できるサービス
- 提供する体験に店舗オペレーションがある
- toBであり、toCな両方の側面をもっているサービス
- 店舗側の業務デザイン、カスタマーの体験デザインがポイント
サービスの成り立ち
- 大きく3つある
- 企画は2018年から開始されていた
- (1) 課題、価値定義、検証設計
- (2) プロトタイピング
- (3) MVP検証
- そして、製品版のリリース
- 3つのフェーズのポイントをお話いただける
このセッションで持ち帰ること
- 価値定義フェーズ
- 価値と対価の因果ループと源泉について
- プロトタイプ・価値検証フェーズ
- 価値検証の成果設計
- 不確実性あらいだす
- High Fidelify Prototypeとい手法を紹介
- MVPフェーズ
- スコープと優先度を決めるのがポイント
- 価値を3つの品質に分けてスコープをきめる
- MVPから製品版に移行するタイミングの判断方法
飲食店の課題の前提情報
- 飲食店のオペレーションプロセス
- リセットはテーブルリセット後、再度ご案内するループで繰り返している
- 青字がホールスタッフがいないと進まない工程
- ホールスタッフがボトルネックになっている課題がある
飲食店の問題と課題
- 初期の段階で40店舗くらいのインタビューを行った
- 一番の困りごとは人材難でフロアスタッフが忙しく、注文待ちストレス注文ロス、入店拒否などの課題があった
- 原因が人に依存したオペレーション構造
- フロアスタッフの頭数がいないとさばけない状況になっていることが原因だった
- 解決方法
- 採用、育成、オペレーション改善があったが全部人に依存した構造の選択で限界だった
- テーブルトップオーダーは、コストが高く中小の飲食店がはらえない、ソリューションがない状態だった
- 人に依存しない構造で、安価に導入できるソリューションがスマホのセルフオーダー
価値定義
- 価値をどう見出していったのか
- ポイントとして、「プロダクトの価値は交換」とみなした「対価とセット」で定義する
プロダクトの価値をどのように整理しているか?
- よくあるやつ
- ジョブ理論
- エレベーターピッチ
- ビジネスモデルキャンバス
- バリュープロポジションキャンバス
- いろいろツールはある
例えばこんな感じ
- ステークホルダーは、オーナー、フロアスタッフ、来店客
- それぞれが持っている問題にたいして価値を対応付けていく
- 進めていくうちに気づいた
- ツールは「課題とか提供価値は整理」してくれる、「実際に提供できている事実が観測することができない」と感じた
- なかなか実感がもてなかった
価値を等価の対価とセットで定義
- 考え方を変えて価値を等価の対価とセットで定義した
- 「価値は提供できたら見合った対価が支払われる」とし、これが観測できて価値が提供できたとみなすと考える
整理してみる
- それぞれの問題と価値が対応としているとしたら、どんな対価が等価になったら交換になるのか
- 価値と対価の整理ができる
- 対価を払うことでより価値を得られる構造にしてループする仕組み
価値の源泉
- 赤枠を「価値の源泉」と読んでいる、めちゃくちゃ重要
- 赤い四角が対価
- 赤い丸が価値
- 価値と対価が実行されないと以降のプロセスが途絶えてしいサービス全体が死ぬ
- 源泉が絶対になりたつことがサービスがなりたつ肝になる
- 以降はプロトタイプで赤枠を重点的に検証していく
プロトタイプ(価値検証)
- 3つのセッション
- (1) 検証の成果設計
- (2) 不確実性マップ
- (3) ハイファイプロトタイプ
1.検証の成果設計
- 検証は、判断のための学習行動といところがポイント
- 検証ってなんなのか?
- 検証は確かめる行為、目的はリスクがともなうYES/NOの判断することと思う
セルフオーダーでの判断
- プロトタイプ後MVPがまっており、MVP開発の初期投資をする価値があるのかが判断ポイント
- 価値があればMVPに以降、なければ棄却して再検討
- 明らかにしたい検証点の洗い出し
- 検証をはじめる前に検証アウトプット作成する
- あらかじめ自分たちの検証点のロジックをもとに判断基準を決済者でクリアにした
- 検証は判断とアウトプットを出す活動といえる
2.不確実性マップ
- 初期に、致命的な不確実性を見定めるということが大事
- 何を検証すればいい?
- 価値定義が成立するためには、どこが確かめるべき怪しい点か?
4つの観点
- INSPIREDの書籍でかかれている
- 不確実性を洗い出す観点
- (1)価値の不確実性
- (2)ユーザービリティの不確実性
- (3)技術実現性の不確実性
- (4)事業実現性の不確実性
- 4つの中で 価値、ユーザービリティが特に大事
- やるやらの判断に影響するから
- やる価値なくて、サービスがつかえなかったら意味がない
実際の検証観点
- 来店客の場合
- ユーザービリティ観点
- セルフオーダーつかってくれるのか?
- 価値観点
- 店員へのオーダーより価値があるのか?
- ユーザービリティ観点
- フロアスタッフの場合
- ユーザービリティ観点
- QRコードを提供できるのか?
- 案内はできるのか?
- 紙のピックアップに無駄が無いか?
- オペレーション観点でみる
- 価値観点
- 業務が楽になるのか?
- キッチンがパンクしないか?
- ユーザービリティ観点
- オーナーの場合(キャッシュポイント)
- 価値観点
- 客単価、人件費に効果がでるのか?
- つくれないのならば導入してくれない
- ユーザービリティ観点
- 実際に効果がでるのか
- オーナーがその効果を実感することができるのか?
- 価値観点
明らかにしたい検証点
- お客様に使われるか?
- 店舗運用が回るか?
- 買ってくれるか?
3.ハイファイプロト
- 検証点がわかったのでプロトタイプする
- よくばらないで最重要な不確実性の検証に振り切る
ハイファイプロトとは?
- MVPとの対比で確認してみる
- Hight Fidelity は、高忠実度という意味
- MVPとくらべて体験の質は一緒
- その他の観点はハリボテ、一部のシーケンスでしか使えなくてほかはほぼ人力という代物
- プロトタイプ作って製品化してしまうケースは やめたほうがいい
- 製品の原型ととらえず、製品の検証として捨てる前提にするとスピードと効率があがる
実際にハイファイプロトした範囲
- 青枠の範囲を対応した
- オペレーションをな
- 実際に紙でQRコードを印刷し、ホールスタッフにくばって配置
- お客さんがQRコード読み取りアプリ起動までは作った
- アプリから注文データをキッチンプリンターは工数が大きいと判断し、人力で対応(人間API)
対応風景
- 4人で2週間で開発した
- 4店舗で3日ほど対応した
- スタッフの案内する様子
- 来店客が使う様子
- 結構アナログでやった
- 3日だったので実際にやって経営的にインパクトはなかったが、仮に1ヶ月やったと仮定した場合の資産を出した
- 定義した検証結果がすべて達成できることがわかりMVPの開発にこぎつけた
MVP(製品検証)
- 大きくふたつのあげられる
- (1) MVPのスコープについて
- (2) MVPの終了条件について
- 最小限のラインを価値の3つの品質という考え方でわけている
MVPってどこまで実装する?
- 前提として以下は考えてはいる
- ビジョン・ミッション
- 目的と戦略
- 開発方針
- ロードマップ建てる
- ユーザーストーリーマッピング
- カスタマジャーに構築
- 一番重要だったことは、前段で話してきた「価値のループ」
- 価値のループが成立し続けないとサービスは成り立たない
- 価値の源泉、キャッシュポイントがなりたたないとViable Productとはいえないと定義した
スコープをきる3つのステップ
- スコープの切り方は優先度と順序の話
- (1)価値と対価のループのステップ毎に区切る
- 1個1個のステップでくぎる
- (2)各ステップの影響度で優先度をつける
- (3)目的別にフェーズにわけてリリース
(1)ステップ毎に区切るとは
- 購買検討、購買、導入、セールスのオンボーディングもフェーズも含まれる
- 体験・対価のループの各利用者のステップ毎に区切っている
- Notionをつかってるみたい
(2)優先度を3つに分類
- (1)価値と対価を阻害する要因を解消する
- 問題がある場合、価値と対価とループがとまるのか?
- 止まらない場合、この品質ではない
- 止まる場合、そのポイントがめっちゃ重要
- (2)効率化
- 問題があることによって、価値と対価のループはとまらないが最小の対価で価値にたどりつけるのか?
- (3)付加価値
- 対価を支払って対価を得られるのか?ここはわかりやすい
- 重要なのは(1)
- (1)がYESならこの案件をやると判断した
(3)フェーズ分け
- アルファ版
- 価値と対価を阻害する要因を解消する案件だけ絞って対応
- ベータ版
- アルファ版の学習
- 効率化することで価値が大幅に向上する案件
- 対価の支払いが効率化する案件
- v1.0版
- この段階でフィットはするため製品化する
- エンハンス(v1.x〜)
- 効率の残課題、付加価値ののせていく
セルフオーダーの場合
- セルフオーダーでのバックログ
- アルファ版のとき、「うどんでいう素うどん」みたいな感じだった
- 画像欲しい、おすすめほしい、決済etc言われたけど、自分たちもほしいと思ったけどやらなかった
- なぜか?
- ミニマムで価値のループが成立していた
- データでも見て取れた
- 現場でも観測できていた
- 付加価値はあとでやるときりわけた
ダブルトラックアジャイル
- ダブルトラックアジャイルをつかってやっている
- 話すとながくなってしまうので割愛(もっとききたかったー)
出来上がったMVP
- アルファ版、ベータ版、製品版を経て出来上がったものなので画像とかもある
MVPの終了条件
- 熱狂をどう判断するか
- Lagging/Leading Indicator
- 対価がポイント
どのタイミングでMVPから製品版に移行する?
- 大きく水漏れをしなければいい
- つまり価値定義が成立し続けていればいい
- Lagging Indicator
- チャーン、ダウンセル
- Leading Indicator
- ぶっちゃけ価値がちゃんと出て、使われていればいい
- 価値と対価と置き換えて指標化していく
どんなかんじか?
- 緑がLagging Indicator
- 高倍率、意向率がチャーンに直結するやつ
- 青がLeading Indicator
- 価値の源泉の業務削減割合が重要で積み重なれば勝ち
- 生むものは?セルフオーダー利用率
- ブーストするものは?QR配布率とQR読取率
水準が重要
- 買う買わないという二次元の問題でなく、グラデーションになっている
- 業務削減ならいくら
- 客単価があがるならいくら
- 人件費が下がったらいくら
- その効果を出すためには
- 業務削減効果、利用率などがどのくらい出せば勝ちがでるのかを見定める
- ここのラインが定量、定性で理解できるのか
水準の間を理解する
- ロジックをつかむ
- なんで人件費がさがれば、いくらで買ってくれるのか?
- なんで客単価がいくら上がったら価値と実感して、下がったら価値じゃないのか?
- 水準の原因
- 利用の心理を理解できているか?
- 具体的なところまで説明できる状態までがゴールライン
Go to Market!
- 価値と対価が成立し続けて、ロジックが説明可能で事業見立てがそろえばGO
まとめ
- ながれ
- 最初は課題整理から価値と対価を定義
- プロトタイピングして
- MVPで製品検証して
- Go to Market
- 大事なポイントは価値定義
- 価値と対価をセットで定義してループで表現する
- どこを確かめて、どのくらいの水準で成立してないと支払ってくれないのか
- のちのちの判断軸になっていく
- そしてセルフオーダーは製品かされた
感想
熱狂のあまり執筆に数日かかりました
「価値の定義」「価値の検証」といった、個人的にどストライクな内容だったのでかなりのボリューミーな記事になってしまいました。またこちらのセッションを順を追っていくことで「Airレジ ハンディ セルフオーダー」のプロダクト開発を追体験できたのではないでしょうか。各パートのプロセスを参考にものすごく参考になりました。日々の業務に活かせる内容てんこ盛りで、新規立ち上げのプロジェクトに参画する際は隅々読み直そうと思います。
弊社ではブログを書くまでがイベントだから!という格言があるとかないとか。 さてさて、私のPmconf2020はこの辺になるのかなとそれではまた来年参加できるのを楽しみにしています!